この文章は、大正2年に刊行された「樺太移住案内」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
第二章 位置及び地勢
第一 位置
樺太島は東は渺茫たるオホツク海に面し、西は間宮海峡を隔てて近く沿海州と相対し、南は西能登呂、中知床の二岬、突出して亜庭湾を擁し、遥かに海を隔てて北海道の宗谷崎と相呼応せるが、西能登呂岬と北海道宗谷岬との間は即ち宗谷海峡にして、其の間僅かに四十里内外に過ぎず、黄やは北緯五十度を限りて露領サガレンに接続し、長く南北に横たわり、其の南北の延長約百六十里、東西の幅員七里ないし四十余里にして面積は二千二百余方里あり九州より稍々小に台湾寄りは稍々大なり。
第二 地勢
地勢は其の輪郭南北に延びて東西に狭く、其の内部における水系及び山系等の地相も、また自ずから南北に発育せり。而して其の中央稍々広き平地は本島を縦断して東西の両山地に分かち、東西両山地も、また南北に並走せる幾多の山岳に依りて成れり。故に樺太は其の地相上よりするときは、中央凹地帯、東部山地帯、西部山地帯の三地帯に区分さるべきも一般に緩穏にして嶮峻の地少なく其の高峻の地と雖も国境付近に於いて尚お四千尺を超えず、東西両山地の中間は低地にして幌内川、内淵川、鈴谷川、留多加川等の河川其の間を緩流す。就中、内淵、鈴谷、留多加の諸川の流域は土地豊饒にして最も農牧に適す。而して陸には鬱蒼たる森林至る處に繁茂し沿海には各種の魚介生息し地下また石炭其の他有用なる鉱物を蔵する等皆それ、天与の富源なれども唯、海岸線は屈曲出入少なく良港湾に乏しきを恨みとす。