この文章は、昭和3年の「4月25日官報」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
大礼記念国産振興東京博覧会より
<第一会場>
上野公園前に、百五十尺の中空高く、さわやかな鋭角を切っている尖塔(萬歳塔)、それに続いて、若葉青葉の緑を縫って竹の臺正門前までの両側には、立体的で形の面白い装飾柱が林立している。
入り口は五か所で、この正門を入ると、つきあたりが大礼記念館で、前の広場には大噴水塔が設けられ、その廻りには種々美しい、草花で飾られている。
・第一号館と第二号館
ここは東京、埼玉、千葉、長野、愛知、京都、群馬、福島、宮城、山形、秋田、山梨、福岡、佐賀、宮崎、熊本の各県の出品が陳列されている。
・西一号館から三号館まで
西一号館から三号館までは、広島市、呉市、福山市を始め、兵庫、新潟、茨城、滋賀、岐阜、岩手、青森、石川、富山、鳥取、島根、岡山、山口、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、福井の各県と、安藤県、醸造試験所、大日本■業協会等の出品が陳列され、二号館は静岡、長崎、栃木、長野、奈良、南洋■等の主として食料品が陳列され、司法省からの囚人の製作品も陳列されている。
二号、三号館の入り口は半円形で、六本の柱に支えられ、全体は美しい桜色に塗られている。三号館は、東京、大阪、神戸の出品が多く、大きい趣向をこらして飾られている。
・特設館
実に七十五を算して、小市街を形成している。工業研究官は、科学的試験や実験を見せ、羊毛の採取から織り上げまでの工程を見せる羊毛工業館などは人目を引いている。
<第二会場>
池の端の勧業館が全部あてられている。第一会場から陸橋昭和橋を渡って行ける。北海道館、樺太館、台湾館、朝鮮館等は、植民地を代表して、各地特有の天産物が陳列してあり、解散、林業等最近の著しい発達を見せている。
・注目すべき機械館
第二会場で、注目するのは、何とゆっても機械館である。各種機械工業の発達の現況を実際に示し、国防館は陸海軍共同の出品で、科学的新兵器を中心として、現在および次の戦争に対する恐怖すべき暗示を與え、戦争の惨禍と国防の必要を訴えている。
要するに、第一会場は国産品が如何に発達したかを見せ、第二会場は科学的に教えられるところが実に多い。