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ノスタルジック解説ブログ

熱海について① 【大正10年・熱海の栞より】

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熱海について① 【大正10年・熱海の栞より】

この文章は、大正10年に刊行された「熱海の栞」の内容です。
写真に関しては、熱海を取り扱った絵葉書から抜粋しました。
尚、絵葉書の年代に関しては,考慮しないものとしています。
又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。


1.熱海の概観

【熱海全景】

 熱海町は東京を南に距る三十二里、伊豆国ー静岡県田方郡の東北端に位し、面積三方里、戸数一五四五戸、人口七八七六(大正十年一月現在)を有し、伊豆山、泉、初島の三区を抱擁している。

 その三面に和田山、念仏山、日金山、岩戸山の秀巒(しゅうらん)、これを囲み、念仏山に登攀すれば、倐忽(しゅくこつ)として、芙蓉峰に接するを得ん。東南の一方、相模灘に望める地区に、展開せられたるが熱海温泉場にして、来たに連なれるは伊豆山温泉場である。

 熱海温泉場が、熱海の首脳であることは、言うまでもない。兀として右方に突出せるは、天下の奇勝、魚見崎にして、海岸に右を和田礒と呼び、中央を仲濱、左を横磯と称している。前面、海上三里を隔て、青螺の初島と相対し、雲烟糢糊(うんえんもこ)たる間に大島を臨み、左方に真鶴崎あり。遥かに房総の連山は、水天髣髴たるあたりに搖曳(ようえい)している。真に是れ風光明媚を誇るに似たりである。

【魚見崎の隧道】

 特に、土地高燥にして湿気きわめて少なく、日航の満喫と、新鮮なる海風とは、機工の中和を馴致して、避寒に好適なるのみならず、扇を斥くるに至るべく、極暑尚寒暖計の東京より低きこと、五度以上、避暑の最適地として、ほとんど理想的に近きもの、熱海の如きは蓋し稀なりと謂うべきであろう。



■街

 もっとも殷賑なるは上本町、本町、仲町、濱町、横町、新横町、荒宿町、坂町にして、東は東町、横磯、北は大久保、崎見町、野中町、小澤町、西は福道、丁場上宿、西南は堀、水口(いう)、和田、元倉、清水町、新濱町、向河原等に区分せられて居り。


■建物

 主なる建物には、畏くも熱海御用邸あり。金枝玉葉の来り浴させ給う。有難き御世かな。

【熱海御用邸】

陸軍衛戍病院熱海分院、鉄道省熱海線建設事務所熱海出張所、鉄道工業株式合資会社、沼津区裁判所熱海出張所、警察署、郵便電信局、熱海銀行及御殿場、駿河、御厨三銀行支店、町役場、小学校、富士水電会社熱海変壓所、熱海軽鉄停車場あり。

【陸軍衛戍病院熱海分院】

 松方、浅野、鍋島、蜂須賀各侯、渡邊伯、鳥尾、曾我、三浦、渡邊各子、後藤、森村、佐藤、尾崎、各保各男、佐藤、佐々木清野三博士、藤田、大倉、村井、柴、渡邊、其の他貴顕紳士の別所を営むものの僂指(るし)するに遑(いとま)あらずして。

 温泉旅館は、街区枢要の地に軒を並べて聳立し、各戸、傾斜に沿うて建築セルものから、坐ながらにして、眺望を恣にするを得べく、規模の宏大にして壮麗なる設備の完整して、清浄なる其の大なるものは、各室百に垂(なんな)んとす。もしそれ、魚貝類、野菜類の豊富にして新鮮なるは、顧客の満悦を購うに足るべきである。


■娯楽機関

 消閑の娯楽機関として、噏気館、常設電気館、末廣演芸館、撞球場、囲碁倶楽部、大弓場、射的場其の他がある。なかんづく、
噏気館内には、町立図書館、噏気室、娯楽室、遊泳自在の大浴場、温泉組合取締所等あり。

噏気館
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