この文章は、昭和14年に刊行された「全日本国力総動員」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
広島県
「躍進目覚ましき工業」
本県の産業状況を見るに、全戸数の六割は農業者にして商業、工業、漁業等の順序であるが、然し生産額からみれば工業最も多く、農業、畜産、林業、水産、■業、鉱業が之に続いて生産総額3億2675万円に達し、逐年増産の趨勢にある。
本県は古くから綿織物及び畳表等の家庭的手工業が行われていたが、明治三十二年、三河瀧の推力を利用し呉、広島附近に送電する電気会社を設置するに及んで俄に電動力使用の各種工業が勃興するに至った。その中、工場数の最多なるものは食料品工業で、紡績、製材、機械器具、金属工業等これに次ぎ、化学工業は其の大部分欧州大戦の影響を受けて起こったが、近時科学の発達に依り、漸次堅実なる進歩をなしている。
工産品の主なるものは清酒1560万円に達し、灘を凌駕せんとする趨勢にあり、その外、金属製品1312万円、綿糸紡績1268万円、木製品1030万円、綿織物844万円、指物類431万円、醤油411万円、缶詰類359万円、菓子類347万円、畳表340万円、護謨製品340万円、製綿322万円、焼酎312万円等で生産総額2億2507万円以上に達し、前年度に比し3762万円の増加を示している。
風土及び機構が牧畜に適し、畜牛数役10万4200頭に及び、特に県下東北部神石郡、比婆郡地方は高原地多く、収養の利に富み古来良牛を算出し、神石牛の名は全国に普く飼養頭数、生産頭数共に国内二、三位を下らない。馬は7695頭、豚は1万277頭、山羊1815頭、緬羊457頭、生産総額915万3000円に上り、近時農事経営上家畜の重要性益々加わり、家畜の飼養数漸次増加を示している。
林業総額818万8000円の中、用材213万5000円、木炭216万7000円、薪炭材180万円等がその主なるものである。
本県は沿海の地多く。近年漁具、漁法の改善、漁船の改良、漁業組合の改善に因り沿海、遠洋漁業共に発展し、更に水産製造業の発達と相俟って益々活発なる活動をなしている。尚近年、鯉、牡蠣等の養殖は長足の進歩を遂げ漸次その産額を増し、水産総額527万円に達している。