この文章は、昭和13年に発行された「観光の台北」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
夜の台北
榮町通り
島都台北の銀座であり、デパートを始め三階建ての大商店が軒を連ね、実に近代都市台北の面目を遺憾なく発揮している。
又、台湾独自の亭仔脚は熱光、強雨を避ける為の遊歩道であり紳士、淑女の散策には好適所である。
西門町附近
夜の歓楽境にして三階建ての大カフェー、大小料亭、花柳界、ダンスホール、大映画館と凡そ娯楽に附随したものは、総てこの一帯に集まって居る。又食道楽には忘れる事の出来ない、江戸前の寿司屋、小料理店に依って成る片倉通りも此処にあり、夜は夜店及び露店食堂が連り、真に夜の更けるのを知らぬ不夜城である。
万華、龍山寺附近
台北の旧盛り場で現在は内地人向け、本島人向けの紅燈青楼が数十軒並んで居る。大洟水河に船を浮かべて美妓を侍らせ■然たる、又左■には忘れられない一情趣である。
龍山寺には夜店、及び露店食堂があって台湾情緒を味わうには絶好の場所である。
大稲埕通り
此処は城北の盛り場で城内の榮町一帯に比して勝るとも劣らぬ所で、所謂台湾の買い物に娯楽に、又味覚を味わうには好適地である。台湾に歩を印したる時には一度は此処に来て本島服の長着に身を飾った美女たちの艶麗極まりなきサービスを受けるか、又台湾料理を食しつつ■が如き胡弓を奏し旅愁を■る月琴を弾じさせて芸姐の哀調身を震わす唄を聞くのも旅情を慰める一方法であろう。
又付近には、夜店及び露店食堂ありて台湾料理の珍味を美味しく又安価に得られる円形公園あり、一度は此の方面の見学をするもの亦、思い出の一つになろう。