この文章は、昭和14年に刊行された「全日本国力総動員」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
沖縄県
「独特の文化を誇る」
沖縄は古くから琉球王国の統治下にあり、明治五年王国を廃して藩と改め、同十三年藩を廃して沖縄県を設置、二市五郡に分かち、宮古、八重山両島以下、大小六十余りの珊瑚礁群島から成り、その海岸線は394里に及ぶ。
九州西南端から太平洋と東支那との間に位し、丘陵性の山野を形成して河川乏しく、港湾の良好なものが少ない。気候は盛夏最高温度摂氏三十五度五、多季の二月最低気温四度を保ち、一年中霜雪をみることがない。夏秋の暴風雨最強風速七十メートル、毎年の風水害に苦しみ、雨量は二千ミリリットルを超え、海内第一の多雨地である。
面積2383.24方キロ、府県中第四十三位にあり、人口59万2494、現住戸数12万6432戸、これを職業別に見ると農業が最も多く七割一分二厘に当たり、工業六分四、商業五分七の順である。亜熱帯の風物と共に建築、彫刻、絵画、染工等に琉球独特の文化を有し、日支両国の文明をよく消化している。
産業は農業が首位、生産額5512万2000余円のうち約四割の2296万2000余円に上り、米、甘蔗、■■等のほか熱帯性果実の産多く、全耕面積の約三割を占める蔗作面積で、甘蔗は本県物産中の首位、収穫高1億3828万余斤、値額796万余円を占めている。稲作は二回作で昭和十年度作反別は7万900余反、収穫高12万2800余石、値額260万9000余円、年々増産の傾向にあり。琉球泡盛また本県独特の産。
工芸は三百年以上の古い歴史を持ち、工芸品に独特の技術と特色あり、郷土色が深い。製糖戸数2200余戸、値額1332万余円で、工産総額2284万円の約四割以上である。四面海に囲まれ水産業盛んで鰹、鮪、旗魚等多く、水産加工業もまた栄えている。