この文章は、昭和11年に刊行された「夕張炭鉱」の内容です。又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
夕張炭鉱
鉱業権者:北海道炭鉱汽船株式会社
位置 :北海道石狩国夕張郡夕張町
鉱区面積:採掘鉱区 12,602,000坪
鉱産額 :昭和八年 1,074,987
昭和九年 1,169,248
昭和十年 1,314,000
地理
夕張町の北端にあり、海抜333メートル、省線夕張駅は市街地の中間に位し、室蘭に145キロ、小樽に158キロなり。又、市街の南端に夕張鉄道会社線、新夕張駅あり。室蘭線栗山駅を経て野幌駅迄53キロ、小樽迄105キロなり。
地質及び炭層
地質は下部第三紀層に属し、夾炭層は頁岩及び砂岩の互層よりなる。炭層は南北凡そ八キロ、十五ないし二十度の傾斜にて東北に走り深部に進むに従い、傾斜緩となり、二ないし六度となる石狩炭田下層群に属し炭層三枚あり、上層四尺、本層二十四尺、内合磐0.4尺及び参酌のものと二枚あり、之によりて本層を六、八、十尺の三層に分かつ。下層は厚さ四尺あり、現在稼行中の炭層は本層を主とす。
炭質及び用途
粘結性瀝青炭にして火力強烈堅緻にして粉砕すること少し、瓦斯製造用としては本邦炭中匹儔なく又骸炭製造、汽缶燃料として賞用せらる。
新夕張炭鉱の炭層は夕張本層の連続にして延べて若菜辺に連なる厚さ上部より六、八、十尺n三層あり。尚その上層に三尺六尺の二層あり。傾斜十度ないし七十度なり。
採炭法
切羽面の長さ70ないし100メートルの堅磐向全身式長壁採炭法を行い、採炭は八尺、六尺、十尺の順にして拂跡は灑水充填或いは帯状乾式充填を行う。支柱は木柱又は鉄柱を施し、採炭には主としてコールピックを用い採炭用の使用爆薬量甚だ少なし。坑道掘進又は採炭には空気圧縮機にロータリー及びレシプロの両型を用い、全坑にて100-350馬力十一台、100馬力未満のもの三十台、総計四十一台、截炭機にはコールピック、空気動フロットマンCA-7型289、同CA-10型8、同CE-13型、一計298。ハンマードリル空気動フロットマンAZ-11四、同AZ-17二〇、デンバーモデル11二十六、インガーソルBAR-33九台、計五十九台。切羽運搬機にセーカーコンベヤ-二十三、チエンコンベーヤー一、ベルトコンベヤー一八(幅24吋-30吋延長2,824メートル)、ベルトコンベヤーは切羽、ゲートロード、小斜坑、堅入等に使用す。
運搬法
シェーキングコンベヤー又はベルトコンベヤーにより0.8トン炭車に積載し、水平坑道は単線エンドレスを用い、坑内卸は50-100馬力のエンドレス、又はホーリング捲揚機にて捲揚げ竪坑又は本斜坑に至り各種捲揚機により坑外に搬出せらる。
夕張鉱新夕張及び角田鉱は坑口よりエンドレス又は電車にて運搬し、電車は四トンないし六トンに二十台にて選炭積込場に運び、省線により運搬す。角田坑は夕張鉄道新二股駅より支線四キロ強にて選炭場に至る同坑坑口選炭機間二キロあり電車にて搬出す。
石狩卸1,350メートル、斜坑十四度は42吋ベルトコンベヤー(130馬力八台)左五坑道及び大新坑間約1,660メートルは30吋のベルトコンベヤーとなり近く運転の予定なり。
通気法
各坑とも機械通気法により扇風機は4-5萬立方尺のシロッコ又はチャンピオン扇風機を設備士、尚深部風道を各坑に開鑿しシロッコ型15-20萬立方尺の扇風機を据え付く。
排水法
水準以下の湧水は各種喞筒を以って揚水す。各坑の排水喞筒は100立方尺23台、120立方尺3台、200立方尺2台、50立方尺未満8台あり。
照明
全部エヂソン帽上燈を使用す。
鉱夫数
坑内:男2,607
坑外:男1,001、女130 計3,738