この文章は、大正9年に刊行された「別府温泉案内」の内容です。
又、旧字や現代では使用しない漢字、旧仮名遣いなどは読みにくいために、現代様に改めました。
竹瓦温泉
別府港桟橋より西北一丁あまり、竹瓦通りにある町有の一大共同温泉場であります。
以前はごく粗末な竹屋根葺の浴場でありましたので、誰いうことなく竹瓦温泉と称するようになったと伝えられ、現在の浴場は大正二年中頃改築したもので、洋風建に百畳敷余の二階広間は誰方でも自由に休息ができるようになっています。
この温泉浴効能は、リウマチス、神経痛、疝気、子宮病、胃腸病に効があり、殊に医者にも見放された病人で担架に乗せられて入浴する人や、両杖に縋って漸う入浴する者も僅かの日数で立派に全癒して帰る人は数限りなくあります。
浴場内の砂湯には親切な砂掛女がおりまして、好みに応じ患部、あるいは全身に温かき砂を盛り上げ幾度も砂を取替え、頭は水で冷やしてくれます。料金は一回五銭の規定です。この温泉はあまり多量に飲むと便秘することがあります。
泉質 炭酸性塩類泉(無職) 温度 摂氏五十一度